Day-2


帝国軍エリア・・夜。

レミィはアルペリオンを率いて、再びその内部へやってきていた
・・喫茶店にいた同業者に代わってもらって、急遽作り上げた仕事である

(さて、と・・)

キールから渡された発信器のスイッチを作動させる
荷物を搬入するため昼間運び込んだ倉庫へ行くと、そのままその発信器を壁にセットする
監視カメラの死角になったそれには誰も気づかず・・・無事にレミィはその場を離れた
・・しばらくの後、爆発音と共に外壁の一部が破られる

「反乱軍!?」
「ネレイドの連中!いよいよ街に手を出すまでになったかッ!!」



多数の兵士が駆けてゆき、その後方からは黒いMCが数機と軍用の軽装攻撃車両とが続いていく
・・それを見計らうかのように、倉庫の床が破られ、中から一機のMCが姿を現した

『お待たせしました、レミィさん』
「遅いじゃない!流れ弾の一つも飛んできたらあんたのその機体、粉々にしてやるトコだったわよ!!」
『す、すみません(汗)』
「まぁいいわ・・さっさと積み荷とっつかまえてよね!片づけるわよ!!」
『了解です♪』

ひょうひょうとしたキールの応答と共に、彼の乗るモノアイのMC・・亀の甲羅のようなものを背負った「シェルザッパー」が変形する
ビークルモードになったそれは甲羅を上にしていて・・まさに「亀」そのものだ
シェルザッパーがビークルのままアームをのばし、レミィが運んだコンテナ・・新型のパーツを回収したのを確認する

『キツイの一発、お願いしますよ!!』
「はいはい!!」

入れ代わりのようにアルペリオンがスタンドモードに変形する
両肩の巨砲・ガーンズバックを正面に構えロックオン・・

この一発があたしの宣戦布告よ・・帝国軍!!


アルファが今まで撃ってきた弾はグレネードのような爆発力のみを持った弾である
ところが今回セットされた弾は、ガーンズバックと呼ばれるこのランチャーが本来持っている性能、それをフルに発揮すべきもの・・
・・すなわち、「要塞攻略兵器」と呼ばれた、現在ではほとんど数の存在しない頑丈かつ強大な威力を持つ「禁断の兵器」である

・・・ピンポイントに軍施設のみを、完全に粉砕する・・・


・・・さぁて・・・「地獄」で会うとしましょうか?

レミィは迷う事なく、トリガーを引いた
・・核やそれの威力より低いとはいえ、この広いエリアを数発で全壊させる破壊力だ
彼女は少しだけ笑みを浮かべながら、まるで楽しむように周囲の施設を破壊していった

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・・レジスタンス・・「ネレイド」の目的は一つ、「帝国の打倒」・・
出来るならば穏便にそれを達成したいが、帝国との戦いは熾烈を極め・・気が付けばネレイドの人員自体がさほどの数もいなくなっていた

・・いささか不本意ではあるが、ネレイドは方針を転換し・・
現在は、人の死や破壊、そういったものをある程度問わない組織となっていた

そうでなくては生き残れない、目的達成などできない。
・・「仕方がない」と割り切るのはあまりよろしい言葉ではないが、「仕方がない」でネレイドは今・・一つの街の軍を、滅ぼしていた
ワークスの居住区・工場区を除いた全ての施設は全壊・・アルペリオンの「禁断の兵器」そしてネレイドのMCによる破壊活動の結果が、これである


「・・レミィさん、すみません・・」
「いーのよ、あたしがやった事、あたしが決めた事なんだから。」


・・人を殺すとか、殺されるとか・・そういう修羅場はもう慣れた、すでに何人も殺した
13という歳ながら、彼女はもう「たくさんの人が死ぬ事」に何の疑念も抱かなくなって久しい・・

・・自分の両親も、恐らく出て行った兄でさえも・・誰かの手でそうなったのだから。


「運び屋始める前・・あたしどんな娘だったと思う?」
「え?」

不意に、そんな言葉を口走らせていた

(・・何を言い出すんだろう、あたし・・)

そう思いつつも、顔に笑みを浮かべたまま、レミィは語り始める

「・・6歳ン時までは普通に家族と暮らしてた、でも両親が帝国に冤罪で殺されて、ショックでどうにかなった兄さんはフラフラ出てっちゃって・・」
「・・・・・・・・」

キールは黙って聞いている

「あたしの元に残ったものは何も無かった。街に行ったけどツテのないあたしなんか入れてくれるワケがない、そして野党に襲われそうになって・・」

レミィは髪を結んでいたリボンをほどくと、顔を真っ直ぐ前に向けた

「・・あたしは通りかかった「師匠」に助けてもらった。人生と戦い方とMCの動かし方、それから運び屋の仕事についても全部学んだ」
「お師匠様・・・ですか?」
「ああ、無口だけどいい人だったよ。すぐ死んじゃったんだけどね・・だから、その形見として残ったのが「アルペリオン」なの。」
「・・・・・・・アルペリオン」

キールの見上げる先には、先ほどエリアを焼き尽くした巨大な砲が月光に輝いていた
その砲・・そして「師匠」の話を聞いた辺りから表情が曇り始めるキール
レミィに背を向けているため、彼女はその表情に気が付かない

「あたしがあんた達に協力したのはね、キール、あんたみたいなのが一杯いる世界ってのを観てみたくなったのが一番の理由なんだ」
「へ?・・わ、私・・ですか?」

突然自分の話題になったので、表情を崩すキール
レミィもさっきまでの辛気くさい雰囲気ではなく、昼間の満面の笑みを浮かべて話している

「あんたみたいに「のほほん」とした人間ばっかの世界になったら、きっと面白い世界になるんだろうね♪」
「そうですかねぇ・・・」
「・・それに、帝国はあたしのお得意さんだったけど、やっぱり親のカタキにヘコヘコしてるみたいでね・・」

親の敵、その言葉がキールの表情をまた、暗くする

「ま、いつかは今日と同じ事になってたと思う。だったら今のあたしの決断は正しい、うん!」

レミィは得意気になって続ける
一転して拍子抜け、崩れるキールの表情・・

「楽天的なんですねぇ・・」
「プラス思考って言ってくれない?」

にっ・・と満面の笑みを浮かべるレミィ

「心配しなくていいわよ、あたしは腕だけじゃなくて根っこから強いんだから♪」
「・・・そうみたい、ですね。」

キールもまた、彼女に微笑みかけた。





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